こんにちは、「オービット通信」編集長のパスカルです。 自衛隊のイベントやニュース映像で、護衛艦の甲板に「スター・ウォーズのR2-D2*みたいな白いロボットがいるのを見たことはありませんか?
愛嬌のある見た目をしていますが、この正体は、艦に迫る対艦ミサイルを至近距離で迎撃する「高性能20mm機関砲(CIWS:シウス)」です。 他の迎撃システムを突破された絶体絶命のピンチに、自動で敵を捕捉し、弾丸の雨を浴びせる「最後の守護神(ゴールキーパー)」です。
今回は、その可愛らしい見た目に隠された、高性能なスペックとメカニズムについて、解説していきます。
そもそも「CIWS」って何?

CIWSは “Close-In Weapon System”(近接防御火器システム) の略で、現場では「シウス」や「ファランクス」と呼ばれています。
遠くの敵はミサイルで撃ち落とせますが、それをすり抜けて艦の目の前(数km以内)まで迫ってきたミサイルは、もうミサイルでは迎撃できません。 そこで登場するのがCIWSです。
「ミサイルがダメなら、鉄砲(バルカン砲)で直接撃ち落とせばいいじゃない」 という、シンプルかつ豪快な発想で作られた、艦の「最終防衛ライン」なのです。
なぜ「R2-D2」みたいな形なの?

あの特徴的な白い頭(ドーム)。ただの飾りではありません。 白いドームの中には、「捜索レーダー」と「追尾レーダー」という2つのレーダーが入っています。
- 上部: 敵を探すレーダーがクルクル回っています。
- 正面: 見つけた敵をロックオンし続けるレーダーです。
レーダーの電波を通す特殊な樹脂で作られているため、あのようなツルッとした白い見た目になっているのです。ちなみに白色なのは、「太陽光の熱を防ぐため」だと言われています。精密な電子機器の塊なので、熱は大敵なんですね。
恐怖のサウンド「ブーーーーーン!!」
CIWSの最大の特徴は、その発射音です。 「ダダダダ」ではありません。「ブーーーーーン!」という、まるで巨大なチェーンソーのような射撃音です。CIWS(ブロック1B)の発射速度は、なんと毎分約4500発。 1秒間に75発もの20mmタングステン弾をバラ撒きます。 音速で飛んでくるミサイルに当てるためには、これくらいの「弾の壁」を作らないと間に合わないのです。
ほぼ全自動で迎撃
CIWSの最も特筆すべきポイントは、基本的に「全自動(フルオート)」で動くことです。 マッハで突っ込んでくるミサイルに対し、人間の反応速度ではボタンを押すのが間に合いません。
スイッチを入れたら、あとはCIWSが自分で考え、
- 敵を見つける
- 脅威度を判定する
- 狙う
- 撃つ
- 破壊を確認して次の敵へ という動作を、機械的な冷徹さで瞬時に行います。
乗員たちが避難した後も、甲板でたった一機、孤独に空を監視して艦を守り続けるのです。
まとめ
頼れるけど、出番がないのが一番。 愛嬌のある見た目と、えげつない連射速度を持つCIWS。 しかし、CIWSの出番が来た時は、すなわち「艦が沈むかもしれない瀬戸際」です。平和な時は白いオブジェとして静かに座っている。 それがCIWSにとって一番幸せな姿なのかもしれません。



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