【解説】次期戦闘機GCAP。英国に誕生した合弁企業「エッジウィング」と、最先端技術について

ミリタリー

2025年も終わろうとしている今、日本の防衛産業にとって最も大きなニュースが話題となっています。 F-2後継となる次期戦闘機(GCAP)。 その開発を指揮する「司令塔」と「実行部隊」が、この数ヶ月で相次いで始動しました。

「日本人がトップって本当?」 「サウジアラビアが入ってくる話はどうなった?」 「機体の名前は?」

今回は、政府(防衛省)、企業(メーカー)、マスコミ(海外報道)の3つの視点から、一般ニュースでは報じられないGCAPについて解説していきます。

指令塔「GIGO」始動。トップは日本人

GIGO(ジャイゴ) 2025年7月、英国のレディング(ロンドン西部の都市)に、3カ国の政府を代表して開発を管理する国際機関「GIGO(GCAP International Government Organisation)」が正式に発足しました。 これまでは各国の防衛省がバラバラに協議していましたが、これからはこのGIGOがすべての権限を持ちます。

初代トップは岡真臣氏 GIGOの初代首席行政官(CEO)に、日本の元防衛審議官である岡真臣(おか・まさみ)氏が就任しました。 「カネは出すけど口は出せない」と言われがちだった過去の日本とは違い、今回は「日本人がトップとして開発を指揮する」という体制を勝ち取ったのです。これは日本の本気度の表れです。

【企業の動き】合弁会社「エッジウィング」誕生

出典:防衛省

GIGOの発足に合わせ、メーカー側も動きました。 日本航空機産業振興(JAIEC)(日)、BAEシステムズ(英)、レオナルド(伊)の3社は、ロンドンに合弁会社(JV)を設立しました。

  • 社名は「Edgewing(エッジウィング)」 2025年中盤から、新会社の名称として「Edgewing」という名前が報じられています。 この会社が、実際に設計図を描き、部品を発注する主体となります。
  • 株式は「対等」 かつての日米開発(F-2)では米国企業が主導権を握りましたが、今回は3社の出資比率は「33.3%ずつ(対等)」とされています。 ただし、実際の「仕事量(ワークシェア)」をどう配分するかは、これから各国の技術力を突き合わせる「血みどろの調整」が始まります。 (※日本はエンジンとレーダーで半分以上を取りたい考えです)

「JAIEC」とは?

三菱重工と日本航空宇宙工業会が共同で設立した会社です。 これが、日本の航空産業界を束ねる「日本代表チーム」となります。つまり、日本は「JAIECという会社を通じて、本体のEdgewingに出資し、人を送り込む」ことになります。

サウジアラビアの参加

2023年頃から騒がれていた「サウジアラビアが4カ国目として参加する?」という噂。 2025年12月現在、この話はトーンダウンしています。

  • ロイター等の報道 最新の報道(2025年7月頃)では、サウジアラビアの参加は「当面見送り(可能性は低い)とされています。
    • 英国・イタリアの本音: 開発費が高騰しているので、オイルマネーを持つサウジを入れて負担を減らしたい。
    • 日本の本音: サウジを入れると、技術流出のリスクが高まるし、イスラエル等との外交関係も複雑になるので「絶対反対」。 結果として、日本の慎重姿勢が通り、現在は「将来的なパートナーとしては歓迎するが、正会員ではない」となっています。

【最新スペック】

巨大化するボディ

出典:Edgewing

現在、GIGOとエッジウィングが進めている「基本設計(Concept Phase)」の最新情報では、機体のサイズ感がより明確になってきました。

  • F-35よりデカイ 全長は約20mクラス。これはF-15やSu-27といった大型戦闘機に匹敵します。 目的はただ一つ、「航続距離」です。 東シナ海や太平洋という広大なエリアで、空中給油なしでも長時間活動できるよう、機体内部を燃料タンクだらけにする設計です。
  • ウェポンベイ(兵器庫) ステルス性を保つためにミサイルを機内に隠しますが、日本が開発中の「極超音速誘導弾」のような大型ミサイルも入るサイズが要求されています。

駐英大使の鈴木浩・駐英大使の公式Xより投稿された、防衛装備品の展示会「DSEI UK 2025」で展示された次期戦闘機の模型

物理ボタン消滅?

GCAPのコックピットには、従来の戦闘機にあるような無数のスイッチやディスプレイが存在しない可能性があります。 現在検討されているのは、「ウェアラブル・コックピット」という概念です。

  • すべてはヘルメットの中に パイロットは最新鋭のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を被ります。 速度、高度、敵の位置、マップなど。必要な情報はすべて「視界」にAR(拡張現実)で表示されます。物理的なモニターを見る必要すらありません。
  • 視線で操作 BAEシステムズが研究している技術では、パイロットの「視線(アイトラッキング)」と「音声」、そして操縦桿のわずかな動きだけで機体を制御します。 まるでSFアニメの世界ですが、2035年の空戦では、「手でボタンを押す」という動作すら遅すぎるのです。

IHIが作る「心臓」は発電所並み

機体を動かすエンジンは、日本のIHIが開発したプロトタイプエンジン「XF9-1」の技術がベースになります。 このエンジンの凄さは、単に推力が15トン級と強力なだけではありません。

  • 空飛ぶ発電所 GCAP用エンジンに求められている最大のスペック。それは「発電能力」です。 将来搭載される「高出力レーザー」や「強力な電子妨害波」を使うには、とてつもない電力が必要です。 IHIの新型エンジンは、世界最高レベルの「スリムなのに超高出力な発電機を内蔵しており、必要なエネルギーをこれ1つで賄います。

GCAPは「空飛ぶAI司令塔」

出典:防衛省

機体が巨大化する理由は、燃料やミサイルを積むためだけではありません。 GCAPの本当の姿は、単なる戦闘機ではなく、無数の無人機を従えて飛ぶ「空飛ぶAI司令塔」でもあるからです。

  • パイロットは「指揮官」になる 2035年の空戦では、人間が操縦桿を握ってドッグファイトをすることは稀でしょう。 パイロットの仕事は、搭載された超高性能AIのサポートを受けながら、戦況全体を把握し、味方の無人機軍団に指示を出す「指揮官」へと変わります。 そのために、GCAPにはスーパーコンピュータ並みの処理能力を持つAIが搭載されます。
  • 「無人機」を従えて GCAPの周囲には、常に数機の「戦闘支援無人機」が随伴します。
    • 先行偵察: 無人機が危険なエリアに先行し、敵のレーダー網をあぶり出す。
    • 身代わり(盾): 敵のミサイルが飛んできたら、無人機がGCAPの前に出て盾になる。
    • 攻撃: GCAPからの指示で、無人機がミサイルを発射する。

GCAPという巨大な親機が、安全な後方から、AIと無人機を使って敵を制圧する。これが日本が目指す次世代の航空戦術です。

【名称】「F-3」になるのか? 名前予想

最後に、気になる「名前」の話を。 現在、この計画は3カ国で「GCAP」と呼ばれていますが、配備された時の名前はどうなるのでしょうか? 報道によると、防衛省が旧日本海軍の戦闘機「烈風」を愛称に使うことを検討しているそうです。烈風はゼロ戦の後継機として計画されたが、製造されずに終わった幻の戦闘機です。

まとめ

2025年12月現在、防衛省は来年度(2026年度)予算案の最終調整に入っていますが、ここにはGCAPの詳細設計費として巨額の予算が計上される見込みです。組織(GIGO)ができ、会社(Edgewing)ができ、トップ(日本人)も決まりました。 もう「やーめた」とは言えない段階まで来ました。そして、この次期戦闘機計画が成功しなかった場合、東アジアの航空優勢は極めて不利なものになるでしょう。日本は必ず成功させなければなりません。

執筆者(パスカル)

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