こんにちは。編集長のパスカルです。2026年度、日本の防衛戦略に歴史的な転換点が訪れようとしています。 陸上自衛隊が開発を進めてきた国産初の極超音速兵器、「島嶼防衛用高速滑空弾」の部隊配備がいよいよ開始されるためです。
マッハ5(音速の5倍)以上の極超音速で飛翔し、複雑な軌道を描いて目標へ突入するこの装備は、既存のミサイル防衛網では迎撃が極めて困難とされています。 なぜ日本はこの装備を配備するのか。そして「早期装備型(ブロック1)」と「能力向上型(ブロック2)」の違いとは何か。 その戦略的意義と性能について解説します。
島嶼防衛用高速滑空弾(HVGP)とは何か

本装備は、名称に「弾」とありますが、実態はロケットモーターを持つ最新鋭の誘導弾(ミサイル)です。 最大の特徴は、従来の弾道ミサイルとは異なる「ブースト・グライド(滑空)」と呼ばれる飛翔方式にあります。
打ち上げ・加速: 地上の移動式発射機からロケットブースターで打ち上げられ、高高度(大気圏上層)まで一気に加速・上昇します。
分離・滑空: 目標高度に達すると、先端の「滑空体」が切り離されます。
極超音速飛翔: 滑空体はエンジンを持ちませんが、猛烈な運動エネルギーを維持したまま、大気圏上層をマッハ5以上の「極超音速」で滑空します。
この「高速性」と「機動性」の組み合わせにより、相手国の空母や揚陸艦などの重要目標を確実に無力化する能力が期待されています。
「ブロック1」と「ブロック2」

1. 早期装備型(ブロック1):2026年度配備
まずは配備スピードを優先したタイプです。
- 形状: 空気抵抗を受けにくい円筒形の滑空体を採用。
- 射程: 数百km程度と推定されます。
- 役割: 敵の上陸部隊や、近海の艦艇への対処。移動式発射機により、島嶼部へ迅速に展開します。
2. 能力向上型(ブロック2):2030年代配備
さらなる技術革新を盛り込んだ、真の「完成形」とも言えるタイプです。
- 形状: 「ウェーブライダー」と呼ばれる、平たく鋭利な爪のような形状へ変更されます。自機が生み出す衝撃波に乗って揚力を得ることで、滑空性能が飛躍的に向上します。
- 射程: 2,000km〜3,000kmクラスへ延伸されると見られ、本州から南西諸島全域、さらには周辺海域の脅威圏外からの対処が可能となります。
トマホークとの役割分担

日本は米国製巡航ミサイル「トマホーク」の導入も進めていますが、両者の役割は明確に異なります。
- トマホーク(亜音速・長射程): 速度は遅いものの、長大な射程と実績を持ちます。「数」を揃えやすく、固定目標などの打撃に適しています。
- 高速滑空弾(極超音速・高貫通力): 極めて高価かつ高度な技術が必要ですが、敵の防空システムが強固なエリアにある「高価値目標(空母、指揮中枢など)」を、防がれることなくピンポイントで破壊する「槍」の役割を担います。
配備先が正式決定!「えびの」と「上富良野」

防衛省の最新発表(2025年8月)により、高速滑空弾大隊の最初の配備地が確定しました。 2026年度(令和8年度)に、以下の2カ所で部隊が新編されます。
- 南の拠点:えびの駐屯地(宮崎県)
- 戦略的理由: 九州南部に位置し、鹿児島湾や太平洋へ抜けやすい交通の要衝です。
- 有事の際はここから沖縄・南西諸島方面へ迅速に展開します。以前「湯布院(大分)」という説もありましたが、湯布院には今年(2025年3月)すでに「地対艦ミサイル連隊(12式SSM)」が配備されたため、高速滑空弾は宮崎の「えびの」が担当することになりました。
- 北の拠点:上富良野駐屯地(北海道)
- 戦略的理由: 北海道のほぼ中心に位置し、広大な演習場(上富良野演習場)と直結しています。
- 将来、射程2,000km超の「ブロック2」が配備されれば、北海道の真ん中から日本全土を守ることが可能になります。
まとめ
2026年のブロック1配備は、日本の防衛力が「従来型の迎撃」から、遠距離での阻止能力を持つ「スタンド・オフ防衛」へと質的に転換することを意味します。 国産技術の粋を集めたこのプロジェクトの成否は、今後の日本の抑止力を大きく左右することになります。今後の展開に注目です。
執筆者(パスカル)



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